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石割桜 ; 塗炭の苦しみ

石割桜 ; 塗炭の苦しみ

『虐待』 動かぬ証拠…私ではない

小学三年生の遠足の、写真の注文を取っていた。母親はPTAの役員で注文の集計をしたときに写真を見たと、怒っていた。「何なのあの写真は。あの股を広げて写真に写って。」
「え、それはないはず。」
「何言ってる。トレパンをはいていたからといって、写真を写している人に、股を開いて写真を撮らせるなんて、ふしだらだ。」
となじった。
「え、でも、私はスカートだったはずだけど。」
「わけわからずに、何を言うか。写真を見てきたんだから。確かだ。」
 小学生の遠足は必ず、スカートで参加していたので、絶対ない。そして、小学生の頃は、一日中、座りだこが足にあったほどの、正座をする生活であったので、母親が言うところの、股を開いていたという、覚えもなかった。写真が届けば、母親からの疑いも晴れるだろうと、証拠のない状況では、何も言えないとその場はそのまま黙った。
学校へ行くと、
「きのう、お母さんが、注文を書き直していったようだけど、S子さんの写真の注文がたくさん入っていたようだから、それは消しておいたからね。」と、担任の先生から言われた。
私はそのとき、意味がわからなかった。写真が届いて見ると、問題の写真は、昼食後、近くの何人かを集めて移したもので、私は、やはりスカートをはいていた。そして、後ろに立っていたのである。座っていたうちに一人は、トレパンをはき、股を開くと言うよりは、リラックスして、足を投げ出しているだけのものだった。それがS子さんだったのである。母親が私とS子さんを取り違えたからだとわかった。安心して、家に帰ると、母親に見せながら、
「ほら、股を開いていたのは、私ではなかったよ。後ろにいるのが私。」
すると、母親は信じられないことを言った。
「そうでしょう。どんなに嘘を言っても、写真という、動かぬ証拠が残っているのだからね。素直に認めるんだよ。まったく、いい恥さらしだ。どんなに恥ずかしかったか、わかるか。」
「え、だから、これは、私ではないから、見て、これは、S子さん、私は、スカートをはいているの。」
「まったく、写真を撮ったのは、男だったのだろう。男の前で、股を開きやがって。今から色気づいて、恥さらしだ。」
「これは、私ではないと言っているでしょう。」
「どんなに騒いでも、証拠が残っているんだ。」
うるさいと言わんばかりに、無視をして立ち去った。その後、何かにつけて、股を開く最低な行動をする子だということを、言われ続けた。他の人間にも話したのだろう。社会人になって、その話を知るはずのない人たちが、さげすみの笑いを浮かべながら、
カメラの前で、股を大開きで、ポーズを取るんだって。」
と、ヌード写真を撮らせているのだろうという、侮りを数多く受けることとなった。


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